"「アートビレッジボイス73」神戸アートビレッジセンター 2014、アーティストコラムのコーナー掲載"


壺馬死野図(こばしのず)


「す」という形は ” +、o、l ” でできている。文字だと知らない私は目で見た「す」を模写した。
+
o
l

ツボは全部で100ツボ描いた。辻褄は合わない。壺ではない、かもしれない。おれは100ツボ描いた。


矛盾が好みだ。他人の矛盾がその時の顔が好きだ。(男の股間が女の谷間が好きだ。その時の顔も好きだ)

みんな欲しいサイヤ人のしっぽ。みんななりたい早乙女乱馬。
小顔の動物。チーター、馬、ねこ。
火、水、染みのついた破れたドローイング。


花。そう、花です。花のちから。

17年生きた愛犬が死に、ただの段ボールに入れました。 花も入れず、しかし、茶色で犬も茶色で地面がタイルで、死んだ犬しか入ってなくて、なんかいいなと思い写真を撮りました。 物体が無くなってからずっと、愛犬の全身の絵を描きたいなと思っていました。写真を探しても良いのが無くて、結局花をいっぱい描いた大きい絵に段ボールに入った死体の愛犬の写真を見ながら小さく描きました。でもそれはやっぱりなんかいいなという写真で悲しい気持ちにはあまりなりませんでした。大きい絵が進んで行ってどんぐりのために大きく空けていたスペースに愛犬を描こうと思いました。制作中にふと描けそうな気がして何も見ないで記憶だけで形をなぞってみました。ぼくはすごく悲しい気持ちになって泣いてしまいました。


小橋陽介


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